第6回 哲学のマナビー
講師:居細工 豊
【機動戦士ガンダム】と【新世紀エヴァンゲリオン】の最大の違いは何か。
「物語」をキーワードにして説明せよ。
東浩紀の言う、「データベース消費」の時代において、自分の好きな分野にのめり込むことの価値を、
自分に身近な具体例を挙げて「物語」をキーワードにして説明せよ。
価値観が多様化する現代において、もはや、革命や宗教、
あるいはガンジーやマザーテレサの生き方のような、
大きな物語は、普遍的価値を持たなくなった。
かといって、人間は物語なしでは生きていけない。
それ故、小さな物語を紡いでいくしか自己実現(幸福になること、幸福を実感すること)
ができなくなってしまっている。
現代の価値観の多様化した社会の中で、どのように生きるか?
設問1. 現代の特徴→価値観の多様化→本物と偽物の区別がつかなくなった。
本物・オリジナル / 偽物・コピーの二項対立が無意味になった。
ディズニーランドのシンデレラ城には玉座やガラスの靴が飾られている。
それがどれほどリアルであつても、そもそもシンデレラはおとぎ噺である。
ディズニーランドの入園者たちは、その偽物の世界に没入するために高いお金を払っている。
そういう状況で、シンデレラ城は鉄筋コンクリートで出来た現代建築(偽物)なのだと主張しても無意味だという事です。
大阪城も偽物、豊臣時代に建造された、本物の大阪城の中にエレベータがあるはずがない。
設問2. データベース消費時代 (インターネット社会)
ツリー型社会 /リゾーム型社会
(Gドゥルーズ・Fガタリ)
ヒエラルキーがある/中心がない(根茎)
ex) 価値観の多様化
さかなクン(魚オタク)
ムツゴロウ(動物オタク)
ダンボールアーティスト(ダンボールオタク)
マツコデラックス(ゲイ)
みんなそれぞれ常識とは違った価値観を持ち、
それを徹底的に追求して独自の世界観を作り上げ、大いに評価もされている。
熱や想い持つことから物語は始まる。
回答のお手本
設問1. 機動戦士ガンダムは、設定された世界観など、連続性のある「大きな物語」に魅力がある。
新世紀エヴァンゲリオンは、そこに登場するキャラクターやメカニックといった単体の中に存在する「小さな物語」に魅力がある。
設問2. ある程度、先の見通しが立った時代には、幸せのテンプレートのような「大きな物語」に求心力があった。
例えば、良い大学、良い会社に入り、結婚して子供を持ち、マイホームを持つ。
この物語の中にいる限り、安全は担保され、自分の居場所を確保することができた。
裏を返せば、途中参加は難しく、また、そこから退くものは落ちこぼれと呼ばれる。
しかし、変化が激しく、情報が氾濫し、価値観が多様化する時代においては、
「大きな物語」は人々の共通了解として機能せず、
変わってデータベース消費となる。
つまり、大きな物語に依存することのない価値を持ち、
いつでもどこででも「小さな物語」を編成することができる、
キャラクターの強い要素が求められる。
人は、自分の好きな分野にのめり込むことで、自身のキャラクターの自律性が磨かれる。
そしてその結果、社会的文脈の中にではなく、自らの中心に価値の軸を持つことができる。
そうすれば、私たちはどんな状況においても、成長や自己実現の物語を紡ぐことができる。
参加者の回答
設問1. ガンダムは「争い」という大きなテーマで、争いの残酷さを長期にわたって視聴者に伝えた。
対してエヴァンゲリオンは「対人関係」がテーマなので、
長期にわたるストーリーの中でもその回ごとに
キャラクター同士の葛藤や戦いがメインの小さなストーリーが展開された。
設問2. データベース消費では自分好みに小さな物語を作れる。
そのため、誰かと共有する時にはその人なりの小さな物語をもとに話をし、
互いに相手の意見を受け入れる。
対して物語消費は背景の物語が大きいため、
みんなが知っている、みんなが共感していると思われがちである。
そしてもし知らない、共感していないということになれば
マジョリティから外れた人だと思われる可能性がある。
これは、違う意見でもお互いを認めようとする現代の個人主義的な流れに反している。
身近な例としては、韓国の某9人組アイドルが自分は好きだが、
ファンはみんなそれぞれ推しが違う。
ファンと話をする時お互いの推しが違うくてもそれぞれの良さを話し合えるし、
自分なりの好きなところや意見を話し合って認め合う。
データベース消費の時代で、小さな物語同士の交換をできることが、
自分の好きな分野にのめり込んで自分のいいように好きになることの価値をより引き立てると考える。
設問1. 機動戦士ガンダムはガンダムそのものというより、
その背景にある作中の宇宙史にのこる地球軍対ジオン軍のような大きな物語に熱中する。
一方、新世紀エヴァンゲリオンは物語ではなく、
作品の世界観に自身の思考や感情を上乗せて熱中する。(フィギュアやコスプレなど)
設問2. 多様化する現代では、革命や宗教など一つの考えに熱中したり、
この人のようにと憧れることも少なくなった。
つまり大きな物語に憧れる人が少なくなり、共同体が解体されるようになった。(核家族化、郊外化)
そんな中、疎かな情報の集積に自身の考えを足し合わせるデータベース消費の時代に移り変わった。
データベースに自身の考え、経験を足すことで物語を形成していく。
なので、その自身の考え、経験を育むことが大切になる。
私はバスケットボールで集団心理や、リーダーシップを学んだ。
その考え、経験が教員となり、少ししかない生徒情報(疎かな情報)に自身の考え、
経験を足し合わせて、新しい物語を作っていっている。
その幅を増やすために自身の好きなことに熱中することが大切で価値がある。それが大きな物語となる。
設問1. 機動戦士ガンダムと新世紀エヴァンゲリオンの最大の違いは、物語性の高さである。
機動戦士ガンダムは、作品の設定や世界観に魅了されるため物語性が高く、
新世紀エヴァンゲリオンは、個々のキャラクターに魅了されるため物語性が低い。
設問2. 私は、約10年間ゴルフに打ち込んだ。
自己のプレースタイルを模索する中で、人格や環境が類似している某ゴルフ漫画の主人公を好きになった。
それから、彼の人間性やプレースタイルを模倣し、追求するようになった。
そして、自己の人間性やプレースタイルを確立させた。
このように、自分の好きな分野にのめり込み、自己の中で小さな物語を作り上げることは、
まるで大きな物語の主人公のように自己実現を果たすことができるという価値がある。
設問1. 漫画やアニメが社会情勢を反映しているという観点を持って書きたいと思う。
ガンダムの物語は「争い」。
時代は1980年代に入り、経済成長を遂げる日本が
アメリカに立ち向かうまさに「争い」とは何かを表現した大きな物語である。
一方エヴァの物語は「人」。
人とはどう在るのかを描いている。
ガンダムが描く「生と死」の概念とは大きく違うポイントである。
設問2. 物語消費は同調圧力を生み出す可能性があると考える。
その理由は、多くの人が共感できる物語で繋がることができるのが物語消費だ。
だから共感できない人を排除したり、分断したりする可能性を秘めている。
一方、データベース消費は自分の勝手な物語を描くことができる。
自分以外の何かによって、ストップをかけられる事はない。
特に幼少の子供は自らの物語を紡いていく。
そして周囲の大人はは子供を認め、褒め称えることによって、自己実現の経験を覚える。
幼少時代の自己実現の経験は、大人になるとさらに自己実現をしようという想いになる。
設問1. 機動戦士ガンダムは物語の中の世界観などを中心に人気がある(全体的な物語)ことに対し、
エヴァンゲリオンはフィギュアの製作などのキャラクター自体(小さな物語)に人気がある。
設問2. データベース消費では、物語消費のように偏った見方をして
その見方に合っていない人は排除すると言うようなyes andがない世界に対して
多様な見方ができるという点がある。
身近な例としてはゴルフ部で、
チームで一つの目標を目指すということはせずに
個々の目標(物語)を大事にして好きなように練習できる環境自体に価値があると考える。